最初のさいしょ

何となく付き合って三か月が経った彼のことを残しておきたいと思います。

私の今後の人生で一番記憶に残るであろう思い出がすでにあるんだもの。

でもその前に、出会った最初の瞬間について残しておかなくちゃ。

 

彼とは、なんてことない語学交換相手を探すアプリで出会いました。

全然ロマンティックじゃない(と彼は言います)けど、

私もそんなつもりはなかったので仕方ない。

彼の漫画の趣味がマニアックで、私の好きなやつも多かったから、

興奮して思わず連絡したことが始まり。

マッチングアプリじゃないから、こっちから勝手にメッセージが送れる。

 

「初めまして!その漫画、私も好きです!よければ仲良くしてください!」

いや、だって本当に友達が欲しかったから、こんなものでしょう。

 

「こんにちは!僕も大好きだ!このあいだこの先生の○○と○○の最新巻を買った!」

彼は日本語がペラペラだけど、まだちょっと独特。

意味は通じるからいいけど、頑張って理解しなきゃいけない時があって、

それがちょっとしんどいのは内緒。

 

「私の周りにそういう話ができる人いないから嬉しい!翻訳してるのもすごいね」

(プロフィールに翻訳家と書いてあったので)

「うわぁ大偶然だな!僕も初めて○○先生のファンと会った!ぜひ友達になりたいな!」

この素直なところ、いいでしょ?

「ぜひ友達になりましょ。○○先生のは読んだことある?」

「ないです!今調べる」

「ああ聞いたことある!△△が結構有名でしょう」

「でもね、私はその有名なやつよりも、こっちがおすすめです」

「そうか!今回まんだらけとかに行ったら絶対買う!」

まんだらけ、知ってるんかい)

「で、アンさんはどんな仕事してるんですか?」

「近所に住んでたら貸してあげるのに。

私はライターみたいなことしてます。

翻訳はどんなやつなの?」

「今は◆◆けど、来週から△△に引っ越す!近いだったらぜひ」

アメリカの大手出版社と契約中だが、漫画の翻訳です。毎月一巻!」

「僕もそういうの狙ってるですね!いつからやってるんですか?」

(惜しい日本語もまぁいいでしょう)

「私は関西に住んでるから東京行くことあったら声かけます」

(多分会うことはないでしょう、南無阿弥陀仏

「神戸か…!残念だな。でも僕も神戸に友達がいるし、行ったら誘ってます!」

(どうせ来ない奴の常套句だろうな、ま東京だしそらそーか)

「で、アンさんが遠いのでジャジャン」〈私のオススメ漫画全巻セットの写真〉

 

この瞬間にちょっと心を掴まれました。

だって私がオススメした漫画をその日のうちに買うなんて、びっくりでしょう。

 

その後、彼はどういう経緯で私が会社を辞めたのかを聞いてきて、

自分のこれまでの人生を話すことに。(割と長文)

それからラインに移行して、彼の人生について教えてくれた。

生まれた国も育った国も違うけど、なんか似てるね、私たち。って言い合って。

「でも僕も日本人学生のみんなからそういう印象が覚えてる、大半が田舎からきて二次会だけ追いかけていた。だからあの頃作ってた日本人の友達はみんな大学以外だったですね。」

とか

「飲み会ばっかでもなんもないしね」に対して彼が

「僕もだ!飲み会よりライブに行くのは好きだし(今夜みたいに。今電車で中野行き!)」

と返したところもいいなぁってなりました。(なんで?)

独特の日本語がかわいい(ちょっと違和感あって読むのむずい)けど、

なんかこのサブカルっぽいのがいい感じ。

 

ここら辺あたりから、

「ん?こいつはかなり変わったマニアック野郎ではないか?」

って匂いがぷんぷん。

だって彼が教えてくれるバンドは大抵知らないし、

彼がよく行くという場所の名前も

なんだかおしゃれなキラキラしたイマドキの若者が行く場所ではなさそうだし、

私が知ってるのはメジャーなロックバンドとか歌手ばかりだから

(いやそんなこともないけど。私もなかなかのマイナー歌手好き)

「これ、話合うのか?」

と思いながらも

「ま、いいや友達だし。会うことないから気にしないでおこ」

くらいのテンションで話を続ける毎日。

 

この頃からなんとなく、お互い日中に返事ができる時はするけど、

だいたい夜にしっかり話をする、みたいなスタイルが定着しました。

今もなんとなくそんな感じかな。

私はその感じも好きだったし、毎日夜になるのが待ち遠しくて、

1人でわくわくしてた。

 

なんだか締まりないけど、私たちの最初の最初は、こんな感じ。